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エイズ(1)-パスツール研究所

1970年、
ウィスコンシン大学マディソン校の『ハワード・マーティン・テミン』と、

『ハワード・マーティン・テミン』が、
カリフォルニア工科大学の学生時代の指導者で、
ソーク研究所のウイルス学者『レナート・ドゥルベッコ』、

ソーク研究所の分子生物学者『デビッド・ボルティモア』が、

レトロウイルスの増殖に必須の因子の「逆転写酵素」を発見し、

1975年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

今まで、
DNAは、DNA自身の複製によって合成され、

遺伝情報は、DNAからRNAへの転写によって、

一方向にのみなされると考えられていましたが、

発見した「逆転写酵素」が、RNAからDNAへ、

遺伝情報を伝達する事ことが、明らかとなりました。

本来の転写と真逆のしくみなので、
「逆転写酵素」と呼ばれるようになりました。

レトロウイルスは、「逆転写酵素」を持っているので、

遺伝情報は、DNAではなく、

RNAをもっている唯一のウイルスで、

有名なのは、「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」です。

そして、「逆転写酵素」を発見したので、

『ハワード・マーティン・テミン』と『デビッド・ボルティモア』は、
ノー ベル賞を受賞しました。

1983年、パリのパスツール研究所で、

『リュック・モンタニエ』と
『フランソワーズ・バレ=シヌーシ』らが、

リンパ腺の慢性的腫脹が見られる、
若い男性同性愛患者のエイズ患者から取った組織から、
ウイルスを見つけ出し、

その後、「逆転写酵素」を検出し、

「逆転写酵素」酵素が減少すると、
ウイルスは減少しましたが、
人間の新鮮な血を与えると、増殖しました。

そのため、病気の原因のウイルスを、
見つけ出したと考えました。

その後、
新種のレトロウイルスの分離に成功し、

エイズの病原体を発見したと確信し、

「LAV (Lymphadenopathy-associated virus)」と命名しました。

同じ頃、
アメリカの国立保健研究機構の『ロバート・ガロ』も、
独自に、エイズ患者からのレトロウイルスの分離に成功し、

エイズの病原体を発見したと確信し、

「HTLV-III (Human T-lymphotropic virus type III)」と命名しました。

同じ頃、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の『レヴィ』らも分離に成功し、
「ARV (AIDS-associated retrovirus)」と命名ました。

その後の研究で、
LAV、HTLV-IIIおよびARVは、同じウイルスであることが明らかとなり、
HIV-1と改称されました。

1985年、パスツール研究所の『リュック・モンタニエ』らが、
エイズ患者から新たな原因ウイルスを分離し、
「LAV-2 (Lymphadenopathy-associated virus-2)」と命名し、
LAV-2はその後HIV-2と改称されました。

ちなみに、HIVは、
ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus)の頭文字を、

エイズ(AIDS)は、
後天性免疫不全症候群 (Acquired Immunodeficiency Syndrome) の頭文字を、
取ったものです。

ちなみに、
HIV感染とは、

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が、感染している状態で、
自覚症状がほとんどないそうです。

エイズ(AIDS)とは、

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって、
体の免疫力が低下し、

その結果として、日和見感染症など様々な合併症が、
出た状態を言うそうです。

「サル免疫不全ウイルス(SIV)」は、
アフリカ大陸に生息する霊長類各種を自然宿主とする、

後天的に免疫不全を発症させるウイルス疾患で、

アジアに生息するマカク属のサルからも分離されていますが、

自然感染の例が無く、

全てアメリカの霊長類センターで飼育されているサルから、
分離されいるだけなので、

同施設で飼育されていたアフリカ産のサルから、
感染したものと考えられています。

その後も、調査した結果、
パスツール研究所が、分離、発見した、
「ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus
(エイズ HIV)」は、

チンパンジーに感染していた
「サル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus SIV)」が、

突然変異によって、

人に感染する能力を獲得した、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」に、
進化したと分かりました。

ウイルスは増殖する際に、
遺伝情報が変化することがあり、

これを変異と言います。

現在、流行中の新型コロナウイルスの遺伝子は、
約3万個のアミノ酸が連なった1本の長い鎖から成ります。

新型コロナウイルスに感染すると、
人間の細胞内で、コピーされて、
どんどん複製されています。

しかし、約2週間に、1箇所程度のの割合で、

コピーミス、すなわち、部品を1か所取り違えて、

変異した新型コロナウイルスが、

発生していると考えられています。

通常、異常状態なので、そのまま消え去ります。

しかし、ごくごくマレに、
以前より、高性能な物が出来るという事が、起こります。

これを、「変異株」と呼びます。

そして、
「サル免疫不全ウイルス(SIV)」にも、「変異株」はあります。

チンパンジーが、
「サル免疫不全ウイルス(SIV)」に感染した、
シロエリマンガベイと、オオハナジログエノンを、
食べていたので、

数万年前より、
2種のサルの「サル免疫不全ウイルス(SIV)」の2種類の「変異株」が、
混ざり合い変化していったそうです。


シロエリマンガベイ


オオハナジログエノン

ちなみに、
チンパンジーは、人と遺伝子が98%同じですが、
「サル免疫不全ウイルス(SIV)」や、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」に、

感染してもエイズは、発症しないそうです。

そして、1884ー1924年頃、サハラ以南のアフリカで、
SIV(サル免疫不全ウイルス)は、

「ヒト免疫不全ウイルス (エイズ HIV)」に、
徐々に、変化していったと考えられています。

そして、1908年頃、カメルーン共和国では、

猿やチンパンジーの肉を食べていたのですが、

SIV(サル免疫不全ウイルス)から、
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に変化していたウイルスに感染していた、
チンパンジーから、広がったと推測されています。

1920年代までには、「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」は、
コンゴ民主共和国の首都キンシャサにまで、広がりました。

当時、病院の注射筒はアルコール消毒されるだけで、
使いまわされていたので、
逆に感染を広めてしまっていたそうです。

1960年、医者や弁護士として働くためにハイチ人が、
コンゴにやって来たのですが、

1965年に、『モブツ・セセ・セコ』が、
クーデターで権力を確立したので、

ハイチ人は、コンゴから追放され、ハイチに戻ったので、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」は、

ハイチに感染が広がりました。

そして、遺伝子解析によると、

1969年、ハイチから、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」に感染していた、

たった1人の移民が、アメリカに入って来て、

徐々にアメリカ全土に、感染を広がったそうです。

そして、カナダ、オーストラリア、欧州、
そして、日本へと感染が、広がったそうです。

ちなみに、1963年1974年にかけて、
西アフリカのギニアビサウ共和国が、
ポルトガルからの独立戦争を行いましたが、

その時、戦争に参加した兵士が、
欧州で、最初の感染者だそうです。

ちなみに、
現在、世界中で毎日、1万6千人が、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」に、
新規感染しているそうです。

「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」の、
最初の発見者をめぐっては、
パスツール研究所の『リュック・モンタニエ』らと、

アメリカ国立衛生研究所の『ロバート・ギャロ』らの研究チームが、
長年にわたって対立し、

1994年に、両者がともに最初であるとして決着しましたが、

これは、エイズ治療薬の特許が絡むもので、

治療薬の発売を遅らせないための、
政治的決着だったそうです。

2008年10月6日、
パスツール研究所の『リュック・モンタニエ』と、
『フランソワーズ・バレシヌシ』の2人が、

「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」の発見者として、
ノーベル生理学・医学賞を授与されました。


パスツール研究所の『リュック・モンタニエ』と『フランソワーズ・バレシヌシ』

パスツール研究所の『リュック・モンタニエ』が、
ノーベル賞の授賞の時、

「アメリカ国立衛生研究所の『ロバート・ギャロ』が、
受賞の対象にならなかったことについては、
驚いた。

『ロバート・ギャロ』には、とても申し訳ない。」と言ったそうです。

ちなみに、
『リュック・モンタニエ』は、ノーベル賞受賞後は、

パスツール研究所で仕事をしているのに、

ワクチンの接種の反対を主張したり、

疑似科学の範疇のホメオパシーを推奨したり、
非科学的や問題的言動やを行う事で有名で、
科学界から問題視されているそうです。

そして、『リュック・モンタニエ』は、

「新型コロナウイルスのゲノムに、
遺伝子配列は、異常だ。

これはとても疑わしいことで、
このような特性は、
自然に発生したものではない。
人工的に作られたもので、
中国の研究所から漏れたのだ。

新型コロナウイルスワクチンが、
ウイルスの変異株出現につながった。」と主張しました。

しかし、
「『リュック・モンタニエ』が、指摘した遺伝子配列の箇所は、
類似のウイルス間では、普遍的にみられるもので、
また、
変異株は、ワクチンが、
流通し始める前から確認されている。」と、
他の多くの学者たちによって、即刻、否定されました。

「ノーベル賞受賞者」という肩書を利用して、
危険なメッセージを発信したとして、
厳しく批判され学会での権威を失ったそうです。

ちなみに、アメリカで、
「ヒト免疫不全ウイルス(エイズ HIV)」を使った、
いまわしい事件が、起こりました。(続く)
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プロフィール

ムーミン

Author:ムーミン
生まれは、福岡、
育ちは、大阪、
現在、秋田市で、
動物病院を開院。

長年、
水族館、動物園で、
獣医師として勤務していました。

短期間ですが、
犬猫行政、
食品衛生業務も
しました。

その後、
長年、
東北、沖縄の
動物病院で勤務しました。

大阪に住んでいた時、
ジュニアリーダーをしていたので、
キャンプなどの指導などをしていました。

旅が好きで、バイクや車で
北海道や東北、関東などを、

野宿しながら、旅をしていました。

そして、
海外14カ国を、旅をして、

海外の複数の動物園や水族館で、
研修しました。

詳しくは、
別のブログ「あっちこっち雑記」で。

祖先は、醍醐源氏の末裔で、
福岡県八女市黒木の
猫尾城の城主を
していました。

先祖は、足利尊氏と戦い、
多々良浜の戦いでは、
敗戦しましたが、

筑後川の戦いなど、
最終的には勝利し、

3代将軍足利義満まで、九州を治め、

中国の「明」と、貿易をしていました。

詳しくは動物病院HPで。

学生時代、
生物学と歴史は好きでした。

試験の時は、
事前に、関連事項まで詳しく調べて、

特に歴史の時は、
現地調査までする事があったので、

筆記試験の時は

関連事項まで、詳細に書くと、

テスト用紙の回答欄のスペースでは、

ものすごく不足したので、

裏まで書いても不足した時には、

2枚目の白紙をもらい、
ぎりぎりまで書いていました。

そのため、
歴史や生物のテスト用紙が配られる時、
あらかじめ、
白紙が、2枚配られるようになりました。

だから、
高校の時、歴史の先生から、
歴史関係の進路を、
ものすごく強く勧められました。

でも、
生物の方が好きだったので、
獣医になりました。

先祖は笛が得意で、
後白河法皇、後鳥羽天皇に、
褒められた事があります。

自分も、子供の頃、
ピアノを習っていたので、
音楽が好きです。

水族館、動物園勤務時代、
野生動物は、
殺気を感じると、
逃げるので、
殺気を感じさせない為、
歌いながら、
治療していたので、
歌が得意になりました。

尚、色々な事を書いていますが、
話し言葉や細かい所などは、
意訳の場合もあります。

リンクはフリーです。

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