感染予防(2)-狂犬病(1)-歴史
- 2022/06/22
- 05:05
古代メソポタミアのエシュヌンナ王国で制定された、
紀元前1930年頃に発令されたエシュヌンナ法典で、
「イヌが市民を咬み、
咬まれた市民が、狂犬病で死亡した時、
イヌの飼い主は、遺族に対し、40シェケルの銀を支払い、
奴隷を咬んで奴隷が死んだ時は、
奴隷の主人に対して、15シェケルの銀を支払う事。」と、
記載されています。
紀元前1900-1600年頃の
メソポタミアの「犬の呪文」には、

狂犬病は、
罹患した動物の唾液に存在する何かによって、
引き起こされ
犬は、年末に月食が起こると、
狂犬病に、なると書かれています。
このように、古代から、証明はしていませんでしたが、
感覚的に、犬の唾液から、
感染することは知られていました。
イラクのメソポタミアの
紀元前2千年頃のニップル遺跡には、
呪術師が、狂犬病治療のために使用していた、
アッカドの呪文が書かれている石板が出土しました。

このような、呪文を見ると、
アメリカのTVドラマ「スリーピー・ホロウ」や、
「スーパーナチュラル」を思い出します。
「スリーピー・ホロウ」や「スーパーナチュラル」が、
終わったのは、非常に残念です。
紀元前300年代の古代ギリシアの哲学者で、
「万学の祖」と呼ばれていた『アリストテレス』は、
「狂犬病は、
動物からの咬み傷によって起きる病気だ。」と言って、
人々に注意を、促しました。
狂犬病は、
ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスを、
病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、
感受性は違いますが、すべての哺乳類に感染します。
狂犬病は、厚生労働省のHPでも書いてあるように、
日本など一部の地域を除いて、全世界で発生し、
毎年、世界中で、
約5万人以上の死者を出しているウイルス感染症で、
一度発症すると、99.9%の確率で死亡すると言われる位、
とても、怖い病気です。

上の図を見れば分かるように、
狂犬病が発生している国は、オレンジ色で、
狂犬病が発生していない国は、青い色ですが、
ほとんどが、オレンジ色です。
ちなみに、
日本での狂犬病のもっとも古い記録は、
717年に発布された「養老律令」です。
そこには、
「其れ(それ)狂犬(たぶれいぬ)有らば、
所在 殺すことを 聴せ(ゆるせ)」と書かれています。
当時の日本の記録では、
狂犬病が発生したとの記載はないので、
狂犬病が、少数発生した可能性がありますが、
随、唐の記録を転記した可能性の方が、高いと考えられています。
ちなみに、『徳川綱吉』が、
1685年頃から1709年の「生類憐みの令」で、
イヌの収容所で、沢山の犬を収容していた時は、
狂犬病は、話題にならなかったので、
狂犬病は、流行していなかったと考えられ、
日本での狂犬病の大々的な発生の公式記録は、
鎖国していた時代の1732年で、出島のあった長崎で、
オランダ商人の連れてきた動物からと推測されますが、
初めて狂犬病が発生し、
1761年には、青森まで、広がったそうです。
そして、
多くの人や犬が、狂犬病に感染し、死亡したそうです。
そして、
第二次世界大戦後、
敗戦により、狂犬病が蔓延し、
牛、馬、羊、豚にも及び危険な状況に陥ったため、
GHQが、日本政府に「狂犬病単独の法律」を作るように指示し
米国陸軍軍医准将兼、
GHQ公衆衛生福祉局長『クロフォード・F・サムス』や、
衆議院議員で獣医師の『原田雪松』らが尽力し、
1950年に、狂犬病予防法が施行され、
犬の登録、予防注射、野犬の抑留等が、徹底された結果、
日本国内の狂犬病発生は、
1956年に、人と犬、1957年に猫を最後に、
狂犬病発生は、無くなったそうです。
わずか、7年という短期間のうちに、
狂犬病を撲滅した日本人は、本当に真面目です。
ちなみに、
米国陸軍軍医准将兼、
GHQ公衆衛生福祉局長『クロフォード・F・サムス』は、
GHQの占領政策を成功させるため、
学校給食の開姶、伝染病対策、医療制度の改革、
保健所制度の拡充などの施策の実現に力を尽くしましたが、
府中刑務所にいた軽犯罪受刑者に対して、
発疹チフス関連の人体実験を行ったそうです。
ちなみに、アメリカは、日本人以外にも、
インデアンや黒人や囚人などに対しても、
人体実験をしていたので、
悪気は無かったと思いますが、その話は長くなるので、後日…。
ちなみに、
現在の日本では、
野犬の捕獲は、保健所で行われていますが、
1948年に「保健所法」の施行されるまでは、
警察や民間の仕事だったそうです。
そして、現在、
日本で飼育されている犬は、
犬のためではなく、
人間のために、
毎年、犬に狂犬病の注射を接種しています。(続く)
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