『エドワード・ジェンナー』とワクチン(2)-「人痘接種法」(1)-ワクチン以前、東洋の古代から続く方法
- 2021/11/01
- 05:05
天然痘は、治療法が無く、
当時、ヨーロッパでは天然痘が、たびたび流行し、
天然痘で、多い年で、約5万人以上が、死亡していました。
発症すると、突然の熱発と共に頭痛や四肢痛、
嘔吐や意識障害といった症状が現れ、
体温が、40度以上を越え、
その後、顔面や頭部を中心に全身に、
発疹が出て、その後、水疱となり、膿疱となり、
喉が焼かれたような激痛が走り、
物を飲み込むのも困難になり、
呼吸障害を発して、20-50%は、死ぬそうです。
幸運にも治癒しても、皮膚に色素が沈着し、
生涯、痘痕(あばた)となって残るそうです。
そのため、当時は、肖像画を描く時、
痘痕(あばた)を描かないのが、常識になっていたそうです。
ちなみに、古代エジプト王朝『ラムセス5世』も、
天然痘を患っていたそうです。
ちなみに、
18世紀、イギリスが、北米の植民地経営を巡って、
フランスと戦ったフレンチ・インディアン戦争の時、
イギリス軍は、
人類史上が初めて、戦争で意図的に「生物兵器」を使う事にし、
フランスと連携したインディアンのチェロキー族に、
親切を装って接近し、
天然痘ウイルスをすり込んだ毛布などを大量に与え、
チェロキー族は、天然痘に罹患し、多くの人々が死亡したので、
戦力は著しく低下し、
その結果、フランスは敗れ、ルイジアナをイギリスに譲渡し、
アメリカに対するイギリスの影響力が大きくなり、
アメリカは、英語圏となりました。
アメリカのインディアンの話は、長い話になるので、
後日…。
しかし、
紀元前1000年頃には、インドや中国では、
天然痘に罹患し治癒した子供は、
その後、天然痘に罹患しないことが、
経験的に分かっていたそうです。
そのため、「人痘接種法(人痘法)」と言って、
天然痘に罹患した患者の膿疱や皮膚の一部を、
健康な人に接種し、免疫を獲得していたそうです。
記録に残されている最も古い人痘法による種痘の記述は、
15世紀の中国の書物に、書かれているそうです。
イギリスの貴族階級の外交官
『エドワード・ウォートリー・モンタギュー』の夫人の、
『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』は、
イギリスにいる間に、天然痘にかかりましたが、
運良く生き残りました。
ちなみに、弟も、天然痘にかかり、死亡したそうです。
『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』は、痘痕(あばた)ができましたが、
1716年オスマン帝国(トルコ)駐在大使になった夫と、
オスマン帝国(トルコ)に行きました。
『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』は、
オスマン帝国(トルコ)で、
軽症の天然痘患者の発疹から膿を採取し、
感染していない人の皮膚につけるという、
天然痘への対策法を知り、
興味を持ちました。
その後、イギリスに戻った後、これを広める努力をしました。
しかし、イギリスの医師たちは、
「東洋の野蛮な民族のやることなんて、
アテにならない。」と言って、
なかなか信用や協力を、得られませんでした。
1721年、『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』は、
自分の娘に人痘を接種させるように、
医師『チャールズ・メイトランド』に頼みましたが、
『チャールズ・メイトランド』は、
自身のキャリアに悪影響をおよぼすことを恐れ
気が進まなかったのですが、
最終的には、
他の医師が立ち会うことを条件に同意しました。
立会人の『ジェームズ・キース』は、
天然痘で自分の子供を数人失っていたのですが、
接種の有効性を見て、6歳の息子『ピーター・キース』に、
接種を受けさせました。
接種法の口コミは広まり、
1721年8月9日、医師『チャールズ・メイトランド』は、
ニューゲート監獄の健康体の囚人6人に、
恩赦を条件に、接種試験を行う事になり、
囚人6人は、9月6日に恩赦を受けて釈放されました。
そのうちの1人が、
10月に、天然痘に直接さらされながらも生存したことで、
免疫が証明されました。
しかし、この結果に、疑問視する医師もいたそうです。
11月、ウェールズ公妃『キャロライン』は、
医師『チャールズ・メイトランド』に、
孤児に接種の試験を行うことを提案しました。
1722年までに、孤児14人を対象に試験を行い、
成功を収めました。
ウェールズ公妃『キャロライン』は、
試験の成功を見て、
1722年4月17日に、
娘『アメリア』と『キャロライン』への接種を行いました。
そして、王族への接種が行われました。
ちなみに、
『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』は、
その後、夫婦関係はうまくいかなくなり、
イギリスを出て、イタリアで暮らし、
数人の人と恋愛関係になり、
夫が亡くなった後、ロンドンに戻りましたが、
程なくして癌で死亡したそうです。
『メアリー・ウォートリー・モンタギュー』と、
医師『チャールズ・メイトランド』、
そして、王族が、人痘法を行って、
その効果を見た事により、
人々も人痘への恐怖感が薄れ、少しずつ広まっていきました。(続く)
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