首を斬られた場合(4)-ウミウシ-自切
- 2021/04/25
- 05:05
水圏生態学研究室大学院生『三藤清香』さんらが、
鹿児島で採集し、飼育していた、
西太平洋、中部太平洋に分布する
コノハミドリガイ(Elysia marginata)の頭と胴体が、
切断しているのを、見つけました。

切れた頭と胴体を観察していると、
YOU TUBEで、見れますが、
胴体を失った頭部は、頭部だけでもぞもぞと這い回り、
数時間後には、エサを食べ始めたそうです。
そして、1週間後には、心臓が再生し、
約3週間後には、胴体と内臓が、完全に再生されたそうです。
『三藤清香』さんらが、
「ウミウシは、心臓などの重要な臓器と切り離されれば、
すぐに死ぬはず。」という固定観念を、覆されたそうです。
ちなみに、
残された胴体は、数時間から最長で110日間、
生存し、物理的衝撃に対して反応しますが、
頭部の再生は出来ず、やがて死んだそうです。
その後の調査により、
全身の完全再生を、2度も成功させた個体もあった一方、
高齢の個体は、自切後、エサを食べず、
約10日ほどで、体は再生せずに、死亡したそうです。
そして、
広島市向島で採集された
日本固有種クロミドリガイ(Elysia atroviridis Baba)でも、
頭から、体の再生が見つかったそうです。
ただし、
人為的に切断した場合の再生現象については、
実験していないのですが、
糸で個体の首部分を絞めて、
ストレスを与えた場合にも、自切が見られたそうです。
トカゲの尻尾切りやウミウシなどの無脊椎動物などで、
危機が迫ると足や尾などを自切した後、
再生させることができる能力は、
知られていました。
ちなみに、
扁形動物門ウズムシ目のプラナリア(ウズムシ)の、
体の再生能力が、
ものすごく高いことで知られていますが、
ウミウシのような複雑な身体構造を持つ生物で、
頭部だけの状態で、
心臓を含めた体全部の再生が、確認されたのは、
初めてだそうです。
『三藤清香』さんらの調査によると、
自切を行ったウミウシは、
全て寄生虫に感染したことや、
胴体の自切後には、寄生虫の排除に成功していた事、
寄生虫に感染していないウミウシは、
胴体の自切を行わない事と、
胴体の切断には、数時間かかるので、
捕食者に狙われた場合には、
間に合わないので、
胴体の自切は、
産卵を妨げる寄生虫を排除することが、
目的だと推測しているそうです。
また、体の一部のみ寄生虫に感染した
クロミドリガイ(Elysia atroviridis Baba)が、
寄生された部位のみを自己消化して、
その後、再生する現象も、確認されたそうです。
『三藤清香』さんらは、頭部から体が再生できるのは、
コノハミドリガイ(Elysia marginata)や
クロミドリガイ(Elysia atroviridis Baba)などの
一部のウミウシが有する、
食べた藻類の葉緑体を、細胞内に取り込み、
光合成能力を獲得するという「盗葉緑体現象」が、
頭部だけで生きるためと、
新しい体が再生するまでのエネルギーを、
得ていると考えているそうです。
胴体再生の詳しいメカニズムは、
まだ分かっていませんが、
切断部位に、幹細胞に似た細胞を利用して、
新しく体と内臓を作り出していると考えているそうです。
「盗葉緑体現象」については、後日…。
研究結果は、生物学全般を対象とした
アメリカ学術雑誌「Current Biology」で、読めます。
奈良女子大学理学部
サイエンスオープンラボでは、
色々な興味深い、生物などの話が見れます。
奈良女子大学理学部のYOU TUBEもあります。
ちなみに、脅威の再生能力と言えば、
プラナリア(ウズムシ)有名ですが、…(続く)
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