フランス革命(5)-偉人、…でも変態『ジャン=ジャック・ルソー』(5)
- 2021/01/15
- 05:05
雑誌の広告で、ディジョン科学アカデミーが、
「学問及び芸術の進歩は、
道徳を向上させたか?あるいは腐敗させたか?」についての、
懸賞論文を募集していることを知りました。
その途端、『ジャン=ジャック・ルソー』は、
精神が高揚して、突然ひらめきました。
そして、アカデミーに、「学問芸術論」と名付けて、
論文を提出しました。
「人間は、本来善良だが、
堕落を正当化する社会制度によって、
邪悪となっている。
学問、芸術の発達が、
素朴さなどの美徳を喪失させ、道徳を堕落させている。
文化を健全化させるには、
人間自身に、元々、内在している、
自然の導きに従えば良い。
人間の良識に、
学問、哲学、芸術を、基礎付けるべきだ。
専制君主が、
人々を支配して、抑圧に順応させるため、
知識と文化をコントロールしている。」と、主張しました。
そして、「学問芸術論」は、入選を果たし、
不遇な状態は一変し、脚光を浴びました。
1753年、再び、ディジョン科学アカデミーが、
「人々の間における不平等の起源は何であるか?
そして、それは自然法によって容認されるか?」についての、
懸賞論文を募集しました。
『ジャン=ジャック・ルソー』は、
前回の「学問芸術論」を、更に展開させ、
「人間不平等起源論」を、完成させました。
「本来、人は与えられた自然の環境的条件のもとで、
自足的に生きてきた。
自己愛と同情心以外の感情は持たない、
無垢な精神の持ち主である。
しかし、理想の状態は、
人間自身の進歩によって失われていった。
人々が、定住し、農業を始めて、
家畜を飼い、文明化していく中で、
生産物から、不平等の原因となる富が作り出され、
富をめぐって、争うようになった。
私有財産制度が、闘争状態を招いた。
文明化によって、
人間は、協力か死かという状況になりますが、
相互不信のため、協力することは難しい。
そのため、
争いで人間が滅亡しないように、欺瞞の社会契約が、行われ、
富の私有を公認する私有財産制が法になり、
国家によって財産が守られるようになる。
そして、不平等が制度化され、
現在の社会状態へと移行した。
富の格差とこれを肯定する法が、
強者による弱者への搾取と支配になっていく。
不平等という弊害が拡大していくにつれて、
悪が社会に蔓延していく。
文明化によって人間が、
自由を失い、社会的不平等に陥った。」と、
鋭い切り口で、現存社会の不法を批判しました。
1754年、『ジャン=ジャック・ルソー』は、
スイスのジュネーヴに帰郷しましたが、
ジュネーヴでの評判は、良くなかったそうです。
その上、以前、
フランスの啓蒙思想家『ヴォルテール』に、
「人間不平等起源論」を贈った時、
『ヴォルテール』は、
「人は、あなたの著作を読むと、
四足で歩きたいと思うでしょう。」と、
嫌味を言われていたのですが、
『ヴォルテール』が、
ジュネーヴで暮らすという事を聞いたので、
『ヴォルテール』と同じところで住むと、
偶然に会うと気まずくなると思い、
フランスに戻り、1756年より1762年まで、
リゾート地として有名なモンモランシーに、住みました。
『ジャン=ジャック・ルソー』は、
周辺の森を散歩しながら、
社会、教育など色々な事を考えました。
すると、『ジャン=ジャック・ルソー』は、
友人の愛人で、30歳位の『デュドト』夫人の、
優しさ、穏やかさに心奪われ、親しくしたそうです。
しかし、内縁の妻『テレーズ・ルヴァスール』らが、
邪魔をしたので、『デュドト』夫人との関係は、
悪くなったそうです。
1755年、リスボン地震が発生し、
10万人の死傷者を出す大災害となりました。
すると、
『ヴォルテール』は、
「リスボンの災禍は、神の存在性と神の非情さだ。」と言い、
他の思想家も同意し、大いに賛同しました。
これに対して、『ジャン=ジャック・ルソー』は、
黙っていはいられなくて、
『ヴォルテール』に、
「地震の災厄が深刻化したのは、
神の非情さではなく、
都市の過密によるものであり、
これは人災だ。
文明への過度の依存すると、
リスクが、生じるので、
文明と人が、自然と調和することが、
必要性だ。」と、手紙を書いて送りました。
そして、他の思想界の人々との、
対立関係は決定的となり、関係が悪くなりました。
友人だった啓蒙思想家『ドゥニ・ディドロ』は、
『ジャン=ジャック・ルソー』の
引き篭もり状態の田舎暮らしや、
『デュドト』夫人との関係などの家族問題を批判しだし、
家族を引き離そうと画策したので、
思想的な対立によるものだけでなく、
感情的な反感もあり、
友人たちと、絶縁状態となっていきました。
そして、(続く)
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