朝鮮半島情勢(35)-韓国(25)-軍事境界線(3)
- 2020/04/14
- 05:05
国際連合、韓国と北朝鮮との停戦協定が結ばれた時、
韓国と北朝鮮の軍隊が、
にらみ合っている北緯38度線の板門店が、
国境ではなく、
陸上の軍事境界線となり、共同警備区域に指定されました。
板門店の共同警備区域にある、
河川の沙川江に架かっている橋「沙川橋」の近くで、
北朝鮮の『金日成』主席指導のもと、
ポプラの木が、約30mにわたって、植えられました。
ちなみに、1953年、
朝鮮戦争停戦後の捕虜交換が、「沙川橋」で行われましたが、
捕虜達が、「沙川橋」の上で、
南(韓国)北(北朝鮮)の方向に向かうと、
二度と後戻りすることが、出来なくなることから、
「沙川橋」は、「帰らざる橋」と呼ばれるようになりました。
そして、
ポプラの木は、どんどん成長し、
共同警備区域に置かれた監視所の視界を、
遮るほどになっていました。
そのため、
韓国と国連軍は、
北朝鮮に、ポプラの木の剪定を行うと、
通告しましたが、
北朝鮮は、ポプラ並木は、
『金日成』主席が、
直接、自分の手で、植えて育てたもので、
現在も、その指導下で生育しているので、
剪定を認める事は、絶対に出来ないと言いました。
しかし、
共同警備区域の監視所の視界には、
邪魔だという事で、
1976年、8月18日、
韓国陸軍将校1人と韓国人の作業員、
国連軍のアメリカ陸軍将校2人、
護衛のための国連軍の8人の兵士が、
ポプラの剪定を行うため、
のこぎりとつるはし、斧を持って、
共同警備区域内に行きました。
その時、韓国と北朝鮮との、
共同警備区域に関する取り決めのため、
武装していませんでした。
そして、ポプラ事件が起きました。
剪定が始まると、
15人の北朝鮮兵が来て、
剪定作業の中止を求めました。
しかし、
国連軍工兵部隊指揮官の
アメリカ陸軍『アーサー・ボニファス』大尉は、
そのまま、剪定作業の継続を、部下に命じました。
しばらくたつと、北朝鮮兵約20人が来て、
再び、剪定作業の中止を求めました。
しかし、剪定作業は、続けられました。
すると、
北朝鮮軍の『パク・チョル』中尉は、
「殺せ!」と叫びました。
そして、
北朝鮮兵は、
剪定用のつるはし、斧を奪い取り、
乱闘劇が始まりました。

そして、北朝鮮兵は、斧で、
アメリカ陸軍『アーサー・ボニファス』大尉と
アメリカ陸軍『マーク・バレット』中尉を、殺害しました。

左上:アメリカ陸軍『マーク・バレット』中尉
すると、韓国軍兵士は、トラックに乗り、
北朝鮮兵に体当たりなどして、騒動をおさめました。
ポプラ事件は、YOU TUBEで、見れます。
その後、
国連軍と韓国軍は、ポプラの木を伐採すべく、
アメリカ民話に因んで名づけられた
ポール・バニヤン作戦が、行われる事になりました。
ちなみに、アメリカの民話の
『ポール・バニヤン』と仲間たちの話は、
自分が、大阪にいた小学生の頃、
友人と、
どちらが早くたくさんの本を読むか、
という競争をした時に、
図書館から、手あたり次第、
色々な分野の本を借りた時に、読みました。
どちらが勝ったかは、忘れましたが、
その時に、少しだけ速読術を会得しました。
現在、自分は秋田で、
動物病院を開院しているので、
大阪の実家には、なかなか帰る事が無いので、
その友人は、FBで繋がっています。
昔、アメリカは、広大な森林の広がる平地で、
大きな山も谷も、あまり無かったそうです。
巨人で怪力の木こりだった『ポール・バニヤン』と
相棒の巨大な青い雄牛『ベイブ』や木こり仲間と一緒に、
アメリカを旅したのですが、
その時に、
山や湖、川が、たくさん出来たそうです。
『ポール・バニヤン』が、愛用の数十メートルもある斧で、
山の木を伐採すると、1日で、山が丸裸になるそうです。
『ポール・バニヤン』が、靴に入った砂を出すと、
小さな山が、出来たそうです。
そして、
飲み水を貯めるために掘った貯水池(五大湖)に、
水で満たそうとして、水を運んでいた時、
誤って愛牛『ベイブ』が、桶をひっくり返してしまったそうです。
その時、大量の水による水害を食い止めるため、
溝を掘ったそうですが、
それが、ミシシッピー川に、なったそうです。
ユタ州で、相棒の巨大な青い牛『ベイブ』が、
病気になり死にかけた時、
『ポール・バニヤン』の涙で、
グレート・ソルト湖が、出来たそうです。
『ポール・バニヤン』が、
木こりの道具で、岩山に傷をつけた所が、
グランド・キャニオンに、なったそうです。
しかし、『ポール・バニヤン』と仲間たちは、
文明が広がり森や自然が少なくなると、
新天地を求めて、森が広がるアラスカに、旅立ったそうです。
ちなみに、
アメリカのミネソタ州には、
『ポール・バニヤン』の墓と伝えられている所も、
幾つか残っていて、
『ポール・バニヤン』と『ベイブ』の像がある記念公園があり、
観光名所となっています。

そして、
ポール・バニヤン作戦は、
1976年8月21日午前7時に、決行されました。
北朝鮮に警告をしないで、
韓国、アメリカ陸軍の23台の車両が、
共同警備区域に進入しました。
車両にはポプラ並木を切り倒すために、
アメリカ陸軍工兵隊員16人が、
斧とチェーンソーを持って乗り込み、
ピストルと手斧で武装した護衛小隊30人、
韓国陸軍のテコンドー熟練者64人が護衛しました。
その上、
上空には、
米韓両軍のヘリコプター20機、
7機のコブラ攻撃ヘリコプターが展開し、
さらにその上空には、
アメリカ空軍のF-4戦闘機、
韓国空軍のF-5戦闘機に護衛された
アメリカ空軍のB-52爆撃機がいました。
そして、
韓国の烏山空軍基地では、
アメリカ空軍のF-111が待機していました。
その上、
朝鮮半島の沖合には、
アメリカ海軍の空母ミッドウェイを始めとする、
機動部隊も展開しました。
さらに非武装地帯の外側には、
アメリカ陸軍歩兵、砲兵、装甲車両、
重装備を施した韓国陸軍とが待機し、
不測の事態に備えました。
すると、
北朝鮮は、自動小銃を装備した150人の兵士を、
共同警備区域内に派遣してきました。
しかし、北朝鮮兵士は、戦闘機などを見て、
戦う気を失せ、
木が切り倒されるまで約1時間、
静かに見守ったので、
武力衝突は回避されました。
その後、
北朝鮮の『金日成』主席が、
ポプラ事件に関して、謝罪したので、
全面戦争に発展することは、ありませんでした。
その後、
両陣営間で行われた会議で、
北朝鮮側の提案により、
共同警備区域内にも、軍事境界線を引いて、
両者の人員を隔離する事が、決定しました。
その後、
共同警備区域の警備を行う国連軍の基地は、
殺害された『アーサー・ボニファス』大尉の名から、
「キャンプ・ボニファス」と名付けられたそうです。
板門店は、
個人で入る事ができませんが、
「板門店ツアー」を予約すると、
「国連軍のゲスト」という事で、観光が出来るそうです。
現在、非武装地帯内の共同警備区域を、
韓国側から訪問する場合、
ポプラ事件についての説明と注意を受けるそうです。
板門店の観光客は、
北朝鮮側からは、「板門閣」 という施設から、
韓国側からは、 「自由の家」 という施設から、
国連の旗がある韓国と北朝鮮の境界線の
軍事停戦委員会本会議場という、
青い小さな建物に入り、
この建物内でのみ、
一時に、反対側へ、
越境することが出来るそうです。
1年間の板門店の観光客は、
韓国が約2万人、北朝鮮が約7千人だそうです。
1984年11月23日、
北朝鮮の板門店観光ツアーに訪れていた
ソ連人大学生が軍事境界線を越えて、
韓国に侵入しました。
この大学生を追った北朝鮮兵士が、
軍事境界線を越えたので、
銃撃戦が開始され、
韓国軍兵士1人と北朝鮮兵3人が死亡しました。
最終的にこの大学生は、アメリカへ亡命したそうです。
1998年2月に板門店の警備に当たっていた
北朝鮮の大尉が韓国側に亡命し、
2007年9月にも北朝鮮の兵士が、
韓国側に亡命してました。
2017年11月13日、北朝鮮の兵士1人が、
軍用車両で共同警備区域に入り込み、
軍事境界線を越えて韓国側に亡命しようとしましたが、
排水口にはまり、脱輪したので、
車から出て、走って、軍事境界線を越えて、
逃げ込み亡命しました。
その際、
北朝鮮の兵士から銃撃を受けて負傷し、
倒れたので、韓国軍の兵士が救助に当たり、
国連軍のヘリコプターで韓国の病院に搬送し、
一命を取り留めました。
その後、北朝鮮は、逃走を防ぐ対策のため、
軍事境界線の北朝鮮側に、
深さ1m以上の溝を掘ったそうです。
ちなみに、現在、
陸上の軍事境界線となった北緯38度線の板門店では、
国連側と北朝鮮側が、各自6カ所の警備所で、
両国とも30人の兵士と、5人の将校が、警備しているそうです。
原則として、
兵士は軍事境界線を越える事は禁止で、
「境界線を越えた者、
相手兵士と会話を交わした者は、
死刑に処せられる。」と定められているそうです。
韓国は、徴兵制度がありますが、
板門店を警備する兵士達は、
韓国軍兵士の中でも、
エリート中のエリートですが、
韓国兵士達が、一番行きたがらない所だそうです。
ちなみに、韓国大統領『文在寅』は、
板門店警備を行ったことがあるそうです。
ちなみに、
板門店の観光客は、
観光するには、重要な注意事項があるそうです。
ジーンズなどのアメリカ製と思われる物、
迷彩色、カーキ色など軍服を思わせる服は、不可で、
チェックでダメだとなると、ジャージに着替えるそうです。
10歳未満の子供は参加不可で、飲酒、アルコール持込み禁止で、
見学している列から離れない、兵士に対して指を差さない、
そして、
集音マイクで聞いているので、悪口を言わない事だそうです。
そして、見学前に、
「敵の行動によって危害を受け、
死亡する可能性があり、
訪問者の安全は保障できない 。」 という同意が、必要だそうです。
ちなみに、(続く)
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