エベレストで聞いた不思議な声(2)
- 2019/12/14
- 05:05
医者ではありませんが、
順天堂大学で、
「高所登山家における
ヘムオキシゲナーゼ1の発現解析」という論文で、
医学博士を取得した位なので、医学には詳しいそうです。
そのため、『三浦豪太』さんは、
『三浦雄一郎』さんが、心臓を悪くしてから、
心拍数に乱れがないか、
不整脈がないか、などを常にモニターして、
一緒に登山し、
万が一の対応にあたり、サポートしてきました。
『三浦豪太』さんは、
自分の血中酸素濃度が、低い事に気が付きました。
酸素を吸えば治るのだろうと思い、
酸素を吸いながら寝たそうです。
朝起きると、落ち着いたので、
『三浦雄一郎』さんと登山を開始したのですが、
一生懸命歩いても、遅れがちになったそうです。
『三浦雄一郎』さんは、何度も止まって、
『三浦豪太』さんが、来るのを待ったそうです。
『三浦豪太』さんは、呼吸が苦しくなり、
息を深く吸い込むと肺が痛かったので、
毎分2Lの酸素を、4Lに上げようとしたら、
後頭部から背中、両手、両足まで冷たくなり、
そして、めまいを感じ、
近くにあった岩に、倒れこむように座り込んだそうです。
その時、スタッフから、
無線の周波数など、
簡単なことを聞かれたのですが、
普段なら、
スラスラと答えられるのですが、
頭が回らなくなり、
分からなくなっていました。
そのため、
『三浦豪太』さんは、高所の影響で、
毛細血管から体液が滲み出て、
脳内に溜まって脳を圧迫し、
判断力や意識に影響し、
緊急に対処しなければ死に至る、
低酸素による脳浮腫が、
起きていると考えました。
すると、左側後方から、
日本語で、低い男性の声で、
「早く降りろ!」という声が聞こえてきました。
『三浦豪太』さんは、近くにいるシェルパは、
日本語が話せないのだが?と不思議に思ったそうです。
そして、『三浦豪太』さんは、
意識が遠のき、手足の感覚がなく、
しびれがあり、足に力が入らなくなったので、
2人のシェルパに抱えられ、
基地のあるサウスコルに、
下山する事にしました。
ちなみに、
サウスコルより上は、
酸素の薄さが人間の生存に影響を及ぼすので、
デスゾーンと呼ばれているそうです。
『三浦豪太』さんは、
先月生まれたばかりの
自分の子供の写真を持っていたので、
それを握り締め、
生きて戻って、
子供の顔を直接見たい!と、
意識を集中したそうです。
そして、男が左側後方から、日本語で、
何度も、「早く降りろ!足を前に出せ!」と、
言ってきたので、
『三浦豪太』さんは、声のする左側を見ようとすると、
男性は、後ろに行ったそうです。
何度も振り向いたので、
その都度、シェルパが、
「どうかしましたか?」と聞いてきたそうです。
『三浦豪太』さんは、
「なんでもない。」と何度も言ったそうです。
『三浦豪太』さんは、手足に力が入らず、
何度も、転びそうになったそうです。
その時、
「ここで、転んだら、一気に滑り落ちるだろう。
そうなればバラバラになるだろうな。
そう言えば、父は、エベレストのサウスコルの8千mから、
スキーで滑って、ギネスブックに掲載されたな…。
スキーで滑った時、
何を考えていたのか?」と思いながら、歩いていました。
すると、左にいる見えない男は、
「何も考えるな。
落ちれば、バラバラになるぞ!」と、
大きな声で、言ってきました。
『三浦豪太』さんは、呼吸が苦しくて、
時々休んでいいると、
見えない男は、
「休むな!早く降りろ!」と、
命令口調で、言ってきました。
そして、
左側から、男は、
「注射しろ、注射!
ザックに入っているステロイドを使え。」と言ってきたそうです。
言われるままに、ザックに入っている、
脳浮腫に利くステロイドを、筋注したそうです。
5分位で、ゆっくり手足の感覚が戻り、
しびれも薄れ、意識もはっきりしてきたそうです。
そして、毎分4Lの酸素を吸っているのに、
酸素濃度は、異常に低かったそうです。
そのため、
衛星携帯電話で日本の事務所で待機している
小林医師に、指示を仰いだそうです。
小林医師は、
「ステロイドを注射したのは、正しい判断です。
それと、
すぐに、高度を下げて、ステロイドを、
2時間後に注射する事。」と言ったそうです。
そして、サウスコルに、到着すると、
男の声の気配がまったく無くなったそうです。
『三浦豪太』さんは、周囲を見回しましたが、
シェルパがいるだけでした。
『三浦豪太』さんは、
よく高所で遭難した人が幻覚や幻聴を経験するという、
幻覚上の人物がかもしれないと思ったそうです。
そして、下山すると、周囲の酸素が多くなり、
自力で歩けるくらいになり、
楽になると、
「もしかしたら、諦めなければ、
山頂へ向かって頑張れたのではないか?
父がこれから、エベレストを登頂しようとしているのに、
自分はサポートをせず逃げたのではないか?
これまで、この登頂の為に何年もかけて準備をしていたのに、
無駄になったのでは?」と、
激しい後悔の念におそわれたそうです。
でも、
8000m以上で脳浮腫になった人のほとんどが、
判断の遅れと処置の遅れで、
悲惨な結果に終わっているので、
スタッフは、
回復してよかったと喜んだそうです。
『三浦豪太』さんは、
右足、右手に違和感があり、
横になり寝ようとすると、
肺がゴボゴボと鳴るので、
ベースキャンプにいるにいる医師と、
無線で交信し、診断してもらったそうです。
そして、
肺の血管の血圧を下げる薬を、
常備薬で持っていたので、
投与して、
横にならずに座った状態で、
安静を保っていると、
状態が安定したそうです。
そして、
父『三浦雄一郎』さんのエベレスト登頂成功を、
無線で聞いたそうです。
『三浦豪太』さんは、
今回の事で、高山病、脳浮腫、肺水腫というのは、
急激に発症して、急激に容態は悪化する事を、
今回、体験したので、気を引き締めたそうです。
ちなみに、現在、エベレスト登山の死亡率は、
約9%だそうです。
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