『高橋コウ』の不思議な体験談(2)
- 2019/09/15
- 05:05
ボロボロの服を着て、
蔦を腰に巻いたおかっぱ頭の老婆が現れたそうです。
老婆に驚いて、2人がじっとしていると、
老婆は、しゃがれた声で、
「今から、どこに行くつもりなのか?
峠から向こうには行ってはいけない。
今晩は、遅いから、自分の家に泊まっていけ。」と言いました。
2人は、
案内されて、家に行くと、
それは、山の中腹に掘った洞窟でした。
洞窟の中は、家財道具らしいものは何もなく、
炉と手製らしい土鍋があり、
土鍋の中は、トウモロコシと何かの肉が入っていました。
老婆は、なまりがひどく、
半分ほどしか、理解できませんでしたが、
茶碗や皿は、無いので、鍋から、棒を渡すので、
それで食えと言っているようでした。
2人は、驚いて、老婆の姿を見つめていたそうです。
そして、老婆は、
「翌朝になったら、峠から戻ってくれ。
この奥に行くと、必ず災難が起きる。
以前、
行方不明になった人を探しに、
多くの人が来た事がある。
私は、危ないので行かないよう止めたのに、
忠告を聞かずに行ってしまった。
翌日、心配になり、確認しに行くと、
全員が、死体となって、動物の餌になっていた。
何年も前、
私の旦那様は、この奥から戻って来ない。
私は、それから、ずっとここにいる。
悪いことは決して言わないから、
この先は、行かないように。」と言ったそうです。
翌朝、『高橋コウ』たち2人は、老婆に感謝して、
「忠告に従って、今から帰ります。」と言って、
洞窟を出ました。
そして、2人は無言で、来た道を、
忠告に従い、ゆっくり歩きながら戻っていました。
しばらくすると、黙っていた息子は、
「人工衛星のとび交うご時世に、
婆さんの言うような馬鹿なことがあってたまるか!
何があるか自分の目で確かめてやる!」と言いました。
『高橋コウ』も同じで、
ますます正体を突きとめたいという気持が高まりました。
そして、2人は、話し合いをし、
田代峠の奥に行って、
真相を確かめようという事になりました。
しかし、
道が無いので、息子は、羅針盤で、方向を確かめながら、
先の見えない藪をかき分け、汗だくになりながら、先を急ぎました。
すると、息子が、
「前の方が変な色に変わってきた!」と言いました。
『高橋コウ』が見ると、
緑色のガスが、勢いよく向かって来ていました。
『高橋コウ』は、幼き時から、山に親しんでいたので、
山を知り尽くしているつもりでしたが、
このような緑色のガスを、見た事がありませんでした。
『高橋コウ』は、
これが、正体なのか?と驚いて、
止まろうと思いましたが、
足は、自分の意志とは正反対に、
ガスの方に進んでいきました。
ちなみに、個人だけの経験では、
全て知っているようでも、
全てを知っているとは、言えません。
実は、色のついた空気と言うのは、
全くないと言う訳ではありません。(続く)
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