ヒマラヤ山脈(エベレスト)登山ー人と「風の鳥」(3)
- 2019/08/30
- 05:05
消化吸収が悪くなり、
体のエネルギーとして、
脂肪より蛋白質が使われるので、
筋肉が少なくなり、
また、
眠っていても、体力が落ちていくそうです。
エベレストでは、酸素が薄いので、
7000m当たりから、
酸素ボンベが必要ですが、
酸素ボンベが、約15時間しか持たないそうです。
標高8000mを超えると、
地上の3分の1程度しか空気がないので、
空気を使って揚力を得る仕組みであるヘリコプターは、
空気が少なすぎて、安定して飛ぶ事が出来ないそうです。
そのため、救助のヘリコプターが来れないので、
緊急事態に遭遇したら、死を意味するので、
標高8000m以上から、
「人が生きていけない領域」という意味で、
「デス・ゾーン」と呼ばれています。
そして、
遺体回収にも、登山許可証が必要で、
人数も複数必要なので、高額な費用も掛かるので、
遺体回収は、物理的にも費用的にも困難なので、
100体以上の遺体が、放置されているそうです。
エベレスト山頂付近の平均気温は、
-20℃からー35℃だそうです。
そのため、
遺体は、冷凍庫に入っているのと同じなので、
何年もの間、腐敗が進まずに、
その姿を残しているそうです。
そして、
カラフルな登山着を着たままの遺体が、
大量にあるので、
「虹の谷」と呼ばれ、
カラフルな登山着を着た遺体が、
登山道の目印となっているそうです。
1996年、下山中にブリザードに巻き込まれ、
低体温症で亡くなったインド人登山家『ツワング・パルジャー』は、
「グリーンブーツ」と呼ばれ、

北東側ルートを通るとその前を必ず通るので、
登山者たちの目印となっているそうです。
2012年、カナダ人の『スリヤ・シャー・クロルファイン』は、
エベレスト登頂に成功したそうです。
そして、
頂上にて自分の成し遂げた快挙により、
興奮状態となり、25分以上、祝福したそうです。
しかし、その時、酸素を使いすぎ、

下山途中、
酸素不足と極度の疲労から、亡くなったそうです。
ちなみに、
標高8000m以上の領域に、酸素ボンベなしで20分以上いると、
脳に酸素が行き渡らず、脳細胞が死んでしまうそうです。
2006年5月15日、
元数学教師でイギリスの登山家『デイヴィッド・シャープ』は、
シェルパやガイド、無線機なしの上、
適切な防寒具と酸素ボンベが十分ではない状態で、
1人で、頂上到達を試みたそうです。
しかし、
その夜は、その年の最低気温となり、
目印になっている「グリーンブーツ」の近くの岩陰で、
寒さと疲労と凍傷のため、休息したそうです。
しかし、その間に凍傷が悪化し、
動く事が、困難になったそうです。
その後、40人以上のの登山家が、
『デイヴィッド・シャープ』の前を、通過しました。
ほとんどの登山者は、
『デイヴィッド・シャープ』は、
生きていて、危険な状況である事は、
分かりました。
しかし、
エベレストの厳しい環境下では、
他人を助けようとしたら、
自分が死んでしまう可能性があるので、
『デイヴィッド・シャープ』を、
支援することなく、通り過ぎて行ったそうです。
しかし、
下山途中だったシェルパ族の『ダワ』は、
『デイヴィッド・シャープ』に、酸素を与えて、
動かそうと1時間近く試みましたが、
立たせることさえ、困難だったので、
泣きながら『デイヴィッド・シャープ』を、
置き去りにしたそうです。

その間、
誰も手伝わなかったそうです。
ただし、
『デイヴィッド・シャープ』が、
支えながら、立てたとししても、
その先の険しい箇所を、
下山させることは不可能だったそうです。
そして、登山の目印になりました。
エベレスト初登頂に成功した『エドモンド・ヒラリー』は、
『デイヴィッド・シャープ』の事を知り、
「エベレスト登頂への姿勢そのものが、
とても恐ろしいものになってしまったように思う。
皆、頂上に到達することしか頭にない。
誰かが高山病に苦しんで岩陰で凍えているのに、
通り過ぎるなんて、間違っている。
遭難したかも知れない者に対して、見向きもしない。
岩陰で死にかけている誰かを、置き去りにするだなんて、
自分には考えられない。
今日の登山家の最優先事項は、頂上に到達することだけだ。
そのような冷酷な態度を恐ろしく思う。」と言ったそうです。
しかし、
『デイヴィッド・シャープ』の母『リンダ・シャープ』は、
「何人もの人が、息子を見たが、支援することなく、通過した。
そして、
シェルパ族の『ダワ』が、息子に酸素を与えようとしたけど、
もう手遅れだった。
エベレストのような厳しい世界では、他の誰かを、
救ったりしないのも正解だと思う。
各自、それなりの覚悟で行っているので、
自分を守るのは、自身の責任です。」と言って、
息子の死は、彼自身の責任だと考えていて、
他の登山家を非難しませんでした。
『デイヴィッド・シャープ』の死亡事件の数日後、
同じような事が、起きました。
2006年5月26日、
オーストラリアの有名な登山家『リンカーン・ホール』は、
総勢73人のチームで、エベレストに挑んだそうです。
そして、シェルパ族の2人と共に、
山頂へ到達することに成功したそうです。
しかし、下山途中、標高8500m位の所で、
高山病の高地脳浮腫を発症し、
昏睡となったそうです。
同行していた2人のシェルパ族は、
下山させようと、長時間、試みましたが、
とても、困難で、どんどん天候が悪化していきました。
そして、
『リンカーン・ホール』は、意識が無くなり、ぐったりしたので、
シェルパ族は、死んだと思い、
標高7000mの所のベースキャンプにいるチームリーダーに、
その事を、無線で伝えたそうです。
チームリーダーは、
どんどん天候が悪化しているので、
これ以上、救助にこだわっていると、
他にも犠牲者が出る可能性があったので、
チーム全員の安全を考えて、
チームリーダーは、
蘇生、救出をあきらめ、下山する事を決断し、
シェルパ族に、
『リンカーン・ホール』を、置き去りにして、
『リンカーン・ホール』の遺族に渡すため、
酸素ボンベなどを回収し、ベースキャンプに戻ってくるように、
無線で伝えたそうです。
そして、
下山したチームは、『リンカーン・ホール』の家族に、
『リンカーン・ホール』が、死亡したと伝えました。
しかし、その3時間後、天候が回復し、気温が上昇し、
『リンカーン・ホール』は、意識を取り戻したそうです。
でも、『リンカーン・ホール』は、
誰もいなく、酸素ボンベもなく、気が動転したそうです。
『リンカーン・ホール』の家族に、
死亡した事を伝えてから、
約12時間後、オーストラリア人『ダンカン・チェッセル』が、
黄色いものが動いているのを発見したので、
気になり近づいてみたら、
『リンカーン・ホール』が、
寝袋、マットレスもない凍り付いた岩の上で、
防寒具を脱ごうとしていたそうです。
その時、『リンカーン・ホール』は、
体温調節中枢が麻痺し、暑いと錯覚に陥り、
衣服を脱いでしまうという「矛盾脱衣」が、
起きていたそうです。
そして、『ダンカン・チェッセル』は、
『リンカーン・ホール』の生存を、ネットなどで伝えたそうです。
エベレスト登山に、
高額な経費をかけ、頂上を目指していた、
『ダニエル・マズール』、『アンドリュー・ブラッシュ』、
『マイルズ・オズボルム』、『ジャンブー・シェルパ』の登山家も、
登頂を断念し、
酸素を与えたり、防寒具も着せたりして、
『リンカーン・ホール』の救助にあたったそうです。
そして、
救助応援を無線で知らせ、手当をし、
救助ために来た11人のシェルパ族と共に、
『リンカーン・ホール』を、
7000m地点のベースキャンプまで、
連れて行ったそうです。
『リンカーン・ホール』は、
凍傷で、手と足の指を失いましたが、

九死に一生を得ました。
しかし、
人々が、死ぬ運命を回避しても、
死の運命から逃れることが出来なくて、
死んでいくという映画「ファイナル・デスティネーション」ではありませんが、
生還した『リンカーン・ホール』は、
2012年、ガンで死亡したそうです。
ちなみに、
『デイヴィッド・シャープ』と、
『リンカーン・ホール』の登山方法は、違います。
『デイヴィッド・シャープ』は、
サポートチームから支援を受けず、
固定ロープ等や装備に極力頼らず、
登る人の個人の力で頂上を目指す、
高度な登山技術の必要な「アルパインスタイル」でした。
『リンカーン・ホール』は、
ベースキャンプを設け、
そこから比較的連絡のとりやすい距離に、
次々と前進キャンプを設営し、
多数の隊員の支援により、
最終的に、少数の隊員が頂上を目指す、
「極地法」でした。
ちなみに、1953年、
エベレスト初登頂した『エドモンド・ヒラリー』と『テンジン・ノルゲイ』は、
「極地法」だったそうです。
現在でも公募隊によるエベレスト等の登山では、
「極地法」で、登頂を目指しますが、
少数の登山者のために、
多くの人と多くの時間が必要なので、
多額の費用が必要です。
「極地法」では、
膨大なゴミが出るのが問題視されています。
「何故、あなたはエベレストに登りたいのか?」と
問われて、
「そこにエベレストがあるから。
(日本で、「そこに山があるから」と意訳)」と答えた
『ジョージ・ハーバート・リー・マロリー』は、
1924年、頂上付近で行方不明となっていましたが、
75年後の、
1999年、国際探索隊によって遺体が発見されたそうです。

死蝋化しているので、皮膚が残っている。
ちなみに、
ヒマラヤ山脈の頂上を目指すのは、
人だけではありません。(続く)
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