クマの『ヴォイテク』伍長(1)
- 2019/05/25
- 05:05
『ヴォイテク(Wojtek、ˈvɔjtɛk)』伍長は、
第二次世界大戦中に、
ポーランド軍に所属したオスのシリアヒグマです。
1942年、イランのハマダーン付近で、
現地の羊飼いの少年が、
猟師に、親を撃たれて孤児となった
生後約3か月のクマの赤ん坊を発見しました。
少年は、クマの赤ん坊を、
育てる余裕がなかったので、
肉の缶詰3個程と引き換えに、
ポーランド人難民に譲渡しました。
ちなみに、
ポーランドは、
1939年にドイツとソ連に侵攻、占領され、
ドイツとソ連の5年以上の占領期間に、
ポーランドの全人口の20%が殺害されたそうです。
そのため、ポーランド人難民が出たそうです。
ポーランド人難民は、
クマをかわいいと思い引き取りましたが、
世話が大変で、手に余るようになりました。
近くに駐屯していたポーランド陸軍弾薬補給隊の兵士たちは、
子グマの様子を見ていて、傍観していられないと思い、
引き取ったそうです。
クマの赤ん坊は、『ヴォイテク』と名づけられました。
『ヴォイテク』は、
ポーランドの一般的な男性名『ヴォイチェフ』の愛称形ですが、
『ヴォイチェフ』の元々の意味は、
戦士、武人で、「戦を楽しむ者」、「微笑む戦士」、
「陽気な戦士」といった意味です。
クマの赤ん坊は、1歳にも満たなかったため、
始めのうちは、ミルクなど食事を、
うまく飲み込むことが出来ませんでした。
そのため、
兵士たちは、色々と試した結果、
薄めたコンデンスミルクを、ハンカチに染み込ませてから、
ウォッカ瓶に入れると、ミルクを飲める事が分かりました。

ちなみに、
自分が動物園勤務していた時、
ゾウ、キリン、カモシカ、チンパンジーなど、
沢山の動物の赤ちゃんを、
人工保育をしたことがあります。
大森山動物園のゾウの『ハナコ』(メス)は、
南アフリカから、オランダ経由で来ましたが、
来た時には、輸送箱の中で暴れたらしく、
輸送箱は一部破損し、頭に傷がついていました。
ゾウは、食べた物の消化率が悪く、
1日200kg以上食べる必要があります。
アフリカでは、ゾウの群れが畑に入ると、
数時間で農作物を、
食べ尽くしてしまう事もあるそうです。
そのため、
何か月も大切に育ててきた作物を失った人たちは、
食糧不足に陥り、
食糧購入を優先させるために、
子どもの教育費や医療費を削減して、
ぎりぎりの生活をしなければいけないそうです。
そして、ゾウに、
人間が殺傷されるという人身被害も発生しているそうです。
そのため、
被害のない日本は、ゾウが好きですが、
現地では、日本ほど、
ゾウが好かれているわけでは無いそうです。
そのため、
作物を失った人たちが、仕返しや、
生活費を稼ぐための象牙を目的として、
ゾウが殺されているそうです。
ちなみに、
草食獣は、草のセルロースを分解することができないので、
腸内細菌の持つ酵素のセルラーゼを利用し、
分解するという消化システムがあります。
奇蹄類のシマウマやゾウなどの単胃動物は、
巨大な盲腸で、
腸内細菌に、セルロースを分解させています。
しかし、
栄養分のほとんどは、
小腸で吸収するのですが、
盲腸は、小腸の後にあるので、
栄養源の吸収効率が悪いそうです。
偶蹄類のウシやキリンなどの複胃(反芻)動物は、
胃を発達させ、複数の胃を持つようになりました。
ウシやキリンは、4つの胃袋を持ち、
第1、2胃で発酵させたものを、
また口に戻して噛み続け、
これを繰り返し、
最後に第3、4胃へと送られ、消化されるそうです。
この反芻により、
栄養を効率よく分解し吸収することが出来るそうです。
だから、
便に未消化物が多いのが、単胃動物のシマウマやゾウで、
少ないのが、反芻動物のウシやキリンです。
ちなみに、アフリカゾウの指の数は前肢4本、後肢3本、
アジアゾウは、前肢5本、後肢4本です。
ちなみに、
発情期のゾウのオスは、攻撃的になり、
親しかった人間にさえも攻撃をするので、
動物園では、側頭腺から液体が出たりするなど、
発情兆候が見えたら、
攻撃されないように、
距離を置いて、細心の注意をします。
全国のゾウの担当者の会議がありますが、
その時の内容が、
いかに攻撃を避けるかが、主な議題となります。
ゾウの『ハナコ』(メス)の親も人に殺されていたので、
来た当初は、人に対して反抗的でした。
しかし、1歳以下で哺乳が必要だったので、
哺乳していたのですが、
口を開けて威嚇して、
向かってきますが、
開けている口に哺乳瓶を入れて、
ミルクを与えると…、
結果、人好きになり、ものすごく懐きました。
ゾウの『ダイスケ』(オス)は、
来た当初から、普通に人に慣れていました。
ちなみに、
ゾウの『ダイスケ』、『ハナコ』は、
お座り、鼻上げ、足上げなどが出来ます。
ただし、
人に見せるためではなく、
治療の時、必要になると思い訓練しただけなので、
来園しても、見る事は出来ません。
そして、『ヴォイテク』は、
肉やパン、果物やマーマレード、ハチミツ、シロップなどを食べて、
順調に成長しました。
ただし、兵士たちと一緒にいたせいか、
タバコを吸うこともあったそうです。
でも、嗜好品で、最も好んでいたのは、
お酒、特にビールだったそうです。

ビールが好きになったのは、
哺乳瓶替わりに使用していたウォッカ瓶に、
残っていたアルコールが、
ミルクに混ざったためと言われています。
『ヴォイテク』は、
寝るため専用の特別製木枠がありましたが、
『ヴォイテク』は、寂しがり屋で、
兵士たちと一緒に眠ることを好んだので、
兵士たちのテントのそばに、
設置された特別製の木枠の中に寝ていても、
こっそりと夜の間に、
就寝中の兵士の毛布の中や
脱ぎ捨てられた軍服の中に潜り込んで寝て、
朝になって、
兵士の顔をなめて起こしたので、
兵士をびっくりさせる事も多かったそうです。(続く)
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