マタギの語り部でもある
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
マタギの信仰する山の神は醜女なので、
より醜いオコゼを供えることで、山の神が喜ぶそうです。
そのため、マタギは、猟の際には、
干物にしたオコゼと狩猟許可書を携帯するそうです。
その昔、峰から峰への藩界越境の許可証である
狩猟許可書は、2種類あり、
「山立根元巻(山達根本巻)」は、
『磐司(磐次郎)』と『磐三郎』、
日光系の天台宗が関係していて、
「山達由来」は、『空海』、
高野派の真言宗が関係していて、
そして夫々、山岳信仰や修験道と関連があるそうです。
マタギの祖先が、日光権現に参拝した時に、
印を押してもらった「山達根本巻」は、
マタギたちが何世代にもわたって、
書き写しているそうです。
ちなみに、
阿仁に伝わる巻物のほとんどは、
日光系で、
高野派は数点しかないそうです。
山に入るの時は、
阿仁のマタギのシカリは、「山達根本巻」と
山神の大好物の魚のオコゼの乾物を、
必ず懐に入れて持参し山神に供えるそうです。
シカリのSさんも、山に入る時には、
「山達根本巻」とオコゼを持って山に入ったそうです。
オコゼを山神に供えると、
山神は、醜女なので、
より醜いオコゼを供えることで神が喜び、
山では常にマタギと行動を共にするそうです。
山以外で、秘巻やオコゼは、
見ては、いけないそうです。
そして…、
山の神は好色だそうです。
戦前まで、秋田の阿仁では、
一人前のマタギになる儀式の際、
マタギたちが、小屋で円座を作り、
儀式「クライドリ(サゲフリ)(マタギイワイ)(スッポマイ)」が、
行われていたそうです。
シカリ(頭領)が、「これよりクライドリをする!」と宣言すると、
初めて狩りに参加する若者などが、
裸にされて、両足を広げて立たされます。
次に指名されたものが、
焚き火にかざして、暖かくなった手で、
裸になった若者の男根、
マタギの専門用語で、「サッタテ(サタテ)(ハト)」を、
つかみます。
その時、
裸の若者は立ったままで、
抵抗してはいけないそうです。
元気になった「サッタテ」に、
木の燃えさしに、麻ひもで結んで、
ぶら下げ左右に振らせると、
火花が散ったり煙が舞い上がったりするので、
変な格好で、体をよじります。
手で消すことも、声を出す事も禁じられているので、
がまんして腰を振りながら飛び跳ねて我慢します。
そして、頃合いを見て、
シカリが、「山の神がお喜びになった。オホホ…。」と、
口に手を添えて言うと、
仲間一同も、「オホホ…。」と言って終わるそうです。
これは、
山の神との象徴的な交合、結婚を意味するそうです。
儀式「クライドリ」の事は、マタギ以外に公言することが、
禁忌とされていましたが、
戦後の民俗調査で、明らかになりました。
秋田のマタギだけではなく、
岩手、山形、新潟のマタギも行っていたそうです。
ちなみに、マタギの間では、
初猟の時に裸になると、好色の山の神は喜ぶので、
狩りが、うまくいくと言われているそうです。
実際に、シカリのSさんも、若い時、
野外で、裸になったそうですが、すぐに獲物が現れたそうです。
でも、裸なので、すぐに銃を撃てなかったそうです。
Sさんは、裸で殺気が無いから、
獲物が現れたと思ったそうです。
自分も、動物園勤務の時、
逃げ回ったり、遠くにいる動物や猛獣には、
ライフルやピストルや吹き矢で、注射していましたが、
いつもは近寄ってくる動物も、注射しようとすると逃げました。
その時、上司K、そして、Sさんから、
殺気を出すから逃げるので、
リラックスした気分を持てと言われたので、
歌を歌い、時には、踊りながら注射していました。
でも、リラックしても、
野生動物には、野生の勘というものがあり、
注射しない時は、近付いてきても、
注射する時は、殺気を感じ、ほとんどが逃げました。
でも、歌はうまくなりました。(続く)
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