マタギから聞いた話(27)-ケボカイの儀式
- 2019/05/03
- 05:05
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
マタギには、掟以外に、儀式もあります。
マタギ共通の巻物「山立根本巻」に従い、
「山は、山の神が支配する所。
山の恵みは、全て山神様からの授かり物。」として、
山神様を敬っているので、
クマを解体する時は、
ケボカイの儀式を行うそうです。
その方法は、
クマを頭が北を向くように、仰向けの状態で寝かせ、
イタヤカエデの小枝で、クマの胸と腹を上下にさすり、
シカリ(頭領)が塩をふって、
「大物千匹 小物千匹 アト千匹 叩カセ給エヤ
南無阿毘羅吽欠蘇波河」と3回唱えるそうです。
次に、下顎から毛皮の下の脂肪が、
なるべく皮に残らないように、
皮を剥いでいくそうです。
この脂肪は、その場で食べる事もあるそうです。
脂肪は、まろやかで甘い味がするそうです。
次に、
剥いだ毛皮を頭と尻を逆にして、
クマの体の上にかぶせ、
イタヤカエデの小枝で、尻から頭へとさすり、
「南無サイホウ ジュガクブシ」と7回、
「コウメヨウ シンジ」と3回、
「コレヨリ後ノ世ニ生レテ
ヨイ音ヲ聞ケ」と1回唱えるそうです。
その後、解体するそうです。
その時、高価で売れる胆嚢は、
シカリがナイロンのヒモで、
その口を縛り、後で乾燥させるそうです。
そして、肉は、村の祭りで使う分と、
これから皆で食べる分を差し引いて、
猟犬も入れて頭数で割るそうです。
次に、毛皮、背骨、内臓、骨、舌、心臓、性器、肺を、
猟に参加した者たちで、入札されるそうです。
後日、入札の金額に、
クマの胆嚢を売った金額を合計して、
参加者に分配されるそうです。
ちなみに、
水族館、動物園勤務時には、
死亡した時は、死因を調べるために、
マスクと手袋をして、病理解剖していました。
その時は、腹部から、切開しました。
ちなみに、死因を調べるために解剖するのですが、
それと共に、動物種により体の構造が違うので、
正常な体の構造を調べると共に、
せめて、採血できるようにしたいと思い、
血管の走行も調べました。
その結果、ペンギンなどの採血が、
出来るようになりました。
ちなみに、
鳥の肩関節に的確に刀を入れて、
関節を外すには、コツがいります。
ちなみに、
ペンギンのカビのアスペルギルス肺炎を調べた時は、
胸を切開した時、カビの胞子が舞い上がるのを見ました。
その時は、マスクしていて良かったと思いました。
ただ、自分が水族館や動物園に勤務していた時は、
小型動物は、死亡しましたが、
大型動物は、マンボウやカモシカ、ニホンジカ位で、
イルカ、スナメリ、サメ、ゾウ、キリン、ライオン、
トラ、チンパンジーなどの大型動物の麻酔治療は、
行いましたが、
これらの大型動物は、死亡しませんでした。
勤務していた時は、1人で解剖していたので、
大型動物だったら、
解剖するのは大変だったと思っていましたが、
現在は、現場獣医は増えて、
仙台港水族館(元松島水族館)は2人以上、
大森山動物園は、4人以上いるので、大丈夫です。
ただ、大森山動物園でキリンが死亡した時、
解剖の時は、2日以上かかったそうです。
水族館や動物園では、儀式とかは、無いのですが、
天然記念物のカモシカやイヌワシが死亡した時は、
文化財保護法の規定により、
個体状況と埋葬した写真を撮影し、
滅失届を県経由で国に提出していました。
マタギの儀式には、
他にも、秘密の儀式もあります。(続く)
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