マタギから聞いた話(26)-掟をやぶると…
- 2019/05/02
- 05:05
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
マタギの掟では、
全身真っ黒なクマと
全身真っ白なクマと通常よりずっと大きなクマは、
山の神様の化身として、崇められていたので、
絶対に撃っては、いけないそうです。
他にも、
後ろ足にしこりのある
「こぶ熊」呼ばれるクマを撃つ事も、
禁止だそうです。
もし、間違って、仕留めてしまった場合は、
マタギを辞めなければならないそうです。
ある冬の日、マタギのTさんが、
猟のため、山に入りました。
しかし、数時間、山を歩きましたが、
獲物が見つかりませんでした。
今期は、不猟でしたが、
今日は、日が悪いと思い、
猟を、やめようかと思った時、
うまい具合に、クマを見つけました。
でも、強風と大雪となり、
視界が悪くなってきました。
クマが逃げそうになったので、
あわてて、すぐに狙いを定めて、撃ちました。
Tさんは、
仕留めたクマの所に駆け寄った所、
ツキノワグマならあるはずの
胸元の白い三日月模様が無いのを見て、
言葉を失いました。
Tさんは、
「必ずどこかに、白い毛がある筈だ」と探しましたが、
白い毛は1本も見つかりませんでした。
そのため、
Tさんは、掟に従い、マタギを辞め、
農業に精を出す事にしました。
でも、Tさんは、マタギに命を懸けていたので、
無気力になったそうです。
その後、
Tさんの家では、ケモノ臭い異種が漂い、
ケモノの息遣いが、聞こえるようになりました。
Tさんは、家の中や周囲を探しても、
動物はいませんでした。
ある夜、Tさんが夜道を歩いていると、
気配がしたので、
後ろを振り向くと、
白い三日月模様が無いクマがいました。
Tさんは、驚いて、もう一度見ると、
クマは、消えていたそうです。
その様な事が続いたので、
Tさんは、ストレスからだと思い、
気をまぎわらすため、
お酒の量が増えたそうです。
しかし、Tさんは、次第に痩せていき、
顔色も悪くなっていきったので、
家族や友人たちは、心配したそうです。
Tさんは、酔うと必ず、
白い三日月模様が無いクマの話をして、
「俺は、あいつに殺される。」と家族や友人に、
話をしていたそうです。
そしてある夜、
友人たちとお酒を飲んで酔っていた時、
突然、訳の分からない事を叫んだ後、
外に飛び出しました。
戻ってこないので、
友人たちは手分けをして、
周囲を探しましたが、
Tさんは、見つかりませんでした。
しかしその後、
Tさんは、山奥の川岸の岩に座った状態で、
死んでいたのを、
偶然に釣り人が見つけたそうです。
Tさんの遺体の周囲には、
クマの足跡と毛が、沢山残されていたそうです。
後日、Tさんの側にクマの幻がいたのを、
見たと言う人もいました。
そして、人々は、
Tさんは、山の神様の化身の全身真っ黒なクマに、
殺されたと、噂したそうです。
自分は、動物園勤務の時、
野生のツキノワグマやカモシカの捕獲を、
水族館勤務の時は、
マンボウやサメの捕獲をしたことがあります。
そして、南極にペンギンを…、
その話は、後日機会があれば、…。(続く)
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