マタギから聞いた話(24)-掟(1)
- 2019/04/30
- 05:05
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
日本は、国土の約7割が山地なので、
山は身近な存在ですが、
古来より日本は、
山から流れる川や、
山に広がる森林地帯に衣食住の全てに渡って、
恩恵を受けているので、
山々に感謝し、
山に対する畏怖、畏敬の思いを抱き、
また、
山は天に近いので、
神様がいる神聖な場所と考え、
崇拝の対象とする山岳信仰が信じられてきました。
そして、
険しい地形や自然環境により、
僅かな不注意でも、
命を奪われかねない環境にあることから、
軽い気持ちの登山により、
危険な状況に陥る行為を、
山の機嫌を損ねる行為として禁忌とし、
神仏を祀る霊山への入山は、
一般の人は入ってはいけない「聖地」とされ、
登山修行の果てに救済があり、
特殊な力を身につけるため、
徳の高い僧侶や修行者しか、
登山は、許されていませんでした。
山岳信仰は、仏教と結びつき、
修験道という日本独自の宗教観を生みました。
登山は、宗教的な目的を持っていたので、
昔の日本には、
現在のような、レジャーのための登山は、
なかったのですが、
江戸時代中期になると、
一般の人々も山や山に祀られている神様を拝むため、
登山をしたいと思うようになり、
一般人の登山も許されるようになり、
その後次第に、
登山そのものを楽しむためなどのレジャーの登山も、
行われるようになりました。
ちなみに、
2013年、富士山は、
「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」として、
世界文化遺産に登録されましたが、
信仰の文字が入っています。
ちなみに、
現在、毎年、山開きが、
その年に初めて登山や入山が許される時に行われますが、
これは、レジャーのための行事ではなく、
元々は、
一般人が、山の神様に会うことが、
許される時期を決めるための、
宗教的な儀式でした。
現在では、
山開きをしていない時期でも、登山はできますが、
安全性の観点から決められている場合が多いので、
必ずそれに従うようにした方が良いと思います。
その神聖な山で、仕事をするので、
マタギには、掟がいくつかあるそうです。
1193年に『高階将監俊行』が、
神聖な山で仕事を行う猟師のための
『日光の狩人の秘伝書』を書いたそうです。
そこには、
「立火死火を忌む事。
月の15日水を浴びて精進し、巻物を読誦する事。
日に南無無量寿覚仏を2万2千遍読誦すれば、
立火、死火も厭わなくなる。
どこでも禽獣を捕ることは自由。
堂塔御宮でも、肉は食べても良い権利を持つ。
もし、智者や仏者が来ても、
右文三十三遍を読めば、はばかることなく、
そのまま肉を食べてもよいという権利を持つ。
これらの事は、子孫まで権利がある。」
と書かれています。(続く)
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