マタギから聞いた話(18)-細い手
- 2019/03/25
- 05:05
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
ある寒い冬の夜、Kさんが、
山で道に迷いました。
長時間歩いて、
ようやく、一軒の家に、たどり着きました。
家のドアを叩くと、1人の男性が出て来ました。
Kさんは、男性に、
寒かったし、歩き疲れていたので、
一晩泊めてもらうように頼みました。
しかし、男性は、
「今日、女房が亡くなって、取り込んでいるので、
もう少し行くと集落があるので、そこで頼んでもらえないか?」
と言いました。
しかし、Kさんは、
「近くには家がないようだし、
疲れ切っていて、もう一歩も歩けないので、
炉端で、暖を取らしてもらい、横になるだけでいいので、
お願いします。」と頼むと、
男性は、
「分かりました。
奥の部屋に、妻の死体がありますが、
私は、葬式の用事で少し出てくるので、
留守をお願いします。」と言って、
家を出て行きました。
薄暗い奥の部屋の布団には、
奥さんの死体が寝かされ、
枕元には白団子とお水が置いてあり、
線香の煙が立ちのぼっていました。
Kさんは、奥さんの死体が気になり、
なかなか寝ることが出来ませんでした。
Kさんが、
何気なく奥さんの死体が寝ている布団を見ていると、
布団から白い細い手が、
スーッと伸びてきて、白団子を取ると、
布団の中に、消えていきました。
Kさんは、
ビックリしましたが、見間違いだと思い、
しばらく見ていると、
再び、白い細い手が、白団子を取り、
布団の中に、消えていくのを、
今度は、確実に見ました。
Kさんは、恐くなり、震え始め、逃げ出そうとしていると、
男性が戻って来ました。
そして、Kさんは、布団から出てくる白い細い手の話をすると、
男性は、
「それは、すみませんでした。
実は、子供が女房を恋しがり泣き続けていたので、
女房の布団に寝かしていたのですが、
女房が死んで気が動転して、
気が回らず、言い忘れてしまいました。
驚かしてすみませんでした。」と言ったそうです。(続く)
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