マタギから聞いた話(13)-家
- 2019/03/03
- 05:05
シカリのSさん親子から聞いた話を続けます。
山菜を取るために山道に入ったMさんでしたが、
気が付くと、あたりが暗くなり、疲れて来たので、
何処かに休む所がないか?と思いましたが、
何もなかったそうです。
野宿になるかもと思い、歩いていると、
少し離れた所に、家の灯りが見えました。
可能なら、あの民家で、
少し休ましてもらおうと思いながら、
灯りのついた家に向かいました。
しかし、近づこうとしても中々近づけず、
おかしいな?思ったそうです。
小一時間位歩いて、
ようやく、
黒塗りの立派な門構えのある大きな屋敷家に着いたそうです。
広大な庭には、手入れのされた立派な花壇があり、
灯りはついているのですが、
声をかけましたが、返事がなく、
人の気配がありませんでした。
大きな屋敷なので、
声が聞こえないのか?と思って、
玄関から中を覗いてみました。
すると、
天井には鮮やかな絵が描かれて、
たくさんの置物はとても美しかったそうです。
座敷には、まるで客人をもてなすかのように、
立派なお膳とお椀にご馳走が載せられ湯気を立てて、
奥座敷の茶釜には湯が煮えたぎっていました。
しかし、誰もいませんでした。
Mさんは、疲れていたので、休みたかったのですが、
怖くなりその家を出て、
振り返らず、急いで家に戻ったそうです。
家に戻り、その家の事を、
物知りのTさんに話すと、
「それは、『迷い家』に違いない。
『迷い家』の物を、1個持ち帰れば、
多くの幸運が舞い込むけど、
欲を出してしまうと、全ての幸運を逃してしまう。
一生のうち、
一度しか訪れることは出来ないと言われている。」と言いました。
そして、Mさんは、ダメもとで、
Tさんと一緒に『迷い家』に向かいましたが、
やはり、見つける事は出来なかったそうです。(続く)
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