糸脈(1)
- 2018/12/29
- 05:05
動物治療をしたと記録があるのは、
『大国主神』です。
『大国主神』が、
大部分の皮膚を剥がれた因幡の白兎に、
皮膚の再生医療をしたそうです。
ちなみに、
現在、獣医領域では、
再生医療が最先端で流行です。
漫画「JIN仁」では、
主人公の医師が、
普通に高貴な人と面会していますが、
実は、
近代以前の日本では、
お医者さんの社会的地位は低かったので、
高貴な人を診察・治療する時、
その体に直接触れることが許されないので、
医師が脈を見るために、
糸脈と言って、
高貴な人の手首に糸を巻き、
お医者さんは、離れた所で、
糸を伝わって来る脈を感じ取る事もあったと言われています。
その上、将軍に近い身分の人では、
その姿を見る事も許可されず、
役人たちは治療に必要な情報も公にしなかったそうです。
第4代将軍『徳川家綱』の正室『高厳院』の
乳がんの診察をするよう江戸幕府の医官の奥医師たちは、
命じられました。
奥医師たちは、
実際に脈を取らないと治療できないと進言しました。
しかし、当時の医師の身分は低かったので、
『高厳院』は、身分の低い者と直接対面するのを拒んだそうです。
そして、適切な治療をする事が出来ず、死去したそうです。
第11代将軍『徳川家斉』が、病気になった時、
蘭方医の町医者『石川良信』が、呼び出されたそうです。
『石川良信』は、
幕臣から、直接将軍の脈を診させるわけにいかないので、
将軍の手首に結んだ赤い糸の端を別室で持ち、
糸脈で、診察しろと命じられたそうです。
すると、
『石川良信』は、
「病は視診、触診から患部を探し治療するもの。
慣習を重んじて糸脈をしろという事自体、
上様の御身を軽んずること。
それでも、
糸脈せよと申されるならば、帰ります。」と拒絶したそうです。
第11代将軍『徳川家斉』から、
『石川良信』に診察して欲しいと頼まれていた幕臣は、
困り果てましたが、解決法を見つけました。
そして、
『石川良信』をその場で200石の旗本に任じ身分を上げて、
診察させたそうです。
その結果、治療の甲斐あって、
第11代将軍『徳川家斉』は全快し、
『石川良信』は、御殿医筆頭になったそうです。
当時のお医者さんは、大変苦労したと思います。(続く)