『井伊直孝』の犬
- 2018/07/07
- 05:05
犬の話もあります。
『井伊直孝』は、
井伊家の家老『庵原主税助』が手柄を立てたので、
褒美として自分の愛犬を、
「この犬は非常に忠実な犬だ。
可愛がればなつくので、大事に育ててくれ。」と言って、
与えたそうです。
そして、『庵原主税助』は、
その犬を大切に育てたそうです。
その後しばらくして、『井伊直孝』は、
久しぶりに元自分の愛犬に会いたいと思い、
用事もあったので、
『庵原主税助』宅を訪問したそうです。
『井伊直孝』が、
『庵原主税助』邸の門に立つと、
1匹の犬が飛び出して、猛然に吠えかかってきました。
『井伊直孝』が、よく見ると、
『庵原主税助』に下賜した犬でした。
『井伊直孝』は、
声をかけると、自分を思い出して、吠えるのをやめて、
以前の様に、尻尾を振って飛びついて来ると思い、
「私を覚えているか?」と言って頭を撫でようとしました。
すると、さらに吠えて今にも咬みに来そうな勢いでした。
その後、何度も声をかけましたが、
犬は、吠えかかってきました。
『井伊直孝』は、
「犬は一度飼われた恩は忘れないと言うが、
こいつは、旧主の私を忘れて、
激しく吠えてきて、咬みつこうとしている。
許せぬ。よく見れば、こいつの耳は長すぎる。
誰でもいいから、犬の耳を斬れ。」と命じました。
すると、
兵法家『岡本半介』が、
『庵原主税助』邸に駆け込み、
大バサミを持って来ました。
そして『井伊直孝』の前に差し出しました。
『井伊直孝』は、
「なんじゃ、それは?」と言うと、
『岡本半介』は、
「馬のたてがみを、
切り揃えるハサミです。」と言うと、
『井伊直孝』は、
「それは知っておる。
『誰か』に犬の耳を刈れ、と言ったのだ。
わしが、刈るわけではない!」と言いました。
『岡本半介』は、
「まずは殿が範をお示し下さい。
殿は、この犬を『庵原主税助』様に、
与えたのではありませんか?
犬というものは忠義なもので、
可愛がってくれる主人には、
どこまでも尽くすものです。
今この犬は可愛がってくれる主人に、
必死になって忠義を尽くしているのです。」と言いました。
『井伊直孝』は、しばらく黙ってから、
「よくぞ申した。」と言って、
機嫌良く『庵原主税助』邸に入って行ったそうです。
江戸時代の愛犬と言えば、
最近読んだ「鬼平犯科帳」に出てきた、
『長谷川平蔵宣以』の愛犬『クマ』を思い出します。
「鬼平犯科帳」の
主人公『鬼平』の愛犬『クマ』は、柴犬のオスで、
元々は本門寺前の菓子屋「弥惣」で飼われていましたが、
「凄い奴」に襲撃され、『長谷川平蔵宣以』が、
脇差のみで、戦う事になり、
絶体絶命の窮地に追い込まれた時に、
「凄い奴」に咬みついて、助けたのが縁で、
飼われるようになりました。
次に、愛読書「鬼平犯科帳」について、
話をします。(続く)
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